朝なけに

「お前、とりあえず座れよ」

中さんは、自分の隣の席の椅子を片手で引く。
それって、隣に座ってもいいってこと?


「では、遠慮なく」


中さんの隣に、ゆっくりと座る。
とても近い距離でこの人を感じる。


「でも、こんな可愛い子に好きとか言われたら、俺なら秒で喰っちゃうけど」


修司さんはそう言う。


「実際急に現れて好きとか言われたら、けっこう引きますよ」


中さんのその言葉に落ち込むけど、迷惑がられている事はすでに分かっているから、挫けない!


「でも、お前今日すげぇ可愛いな?」


そう言って中さんが急に私に目を向けて来るから、胸の高鳴りがハンパない。


「中君もまんざらじゃないんじゃないの?
好きになると、急にその相手が輝いて見えるから」


「いや。それはないですって」


中さんが、今日の私を可愛いって言ってくれたのは、化粧とこの髪型のせいだろうな。
やはりプロって凄い。
私もこれからはもう少し化粧をしよう。


「葵衣だったな、お前何飲むんだよ?」


中さんは、私の名前を知ってくれているんだ。


「あ、あの、オレンジジュースで」


そう言うと、


「なるほど、お子さまなんだ。
それは喰えないね」


修司さんは、そう笑う。
少し馬鹿にされているような気はするが、修司さんだけじゃなく、中さんも笑っていて、まあいいか、と思った。