朝なけに

私は着替えを済ませ、早速そのお店へと行く。
場所は、ネットでお店の名前で調べたらすぐに分かった。
今日は定休日ではなく、営業中だということも。


小さな雑居ビルの一階にそのお店はあり、緊張しながらも扉を開いた。
扉を開くと、正面のカウンターの向こうにこのお店の店主らしき男性が立っていて、店内の2つあるテーブル席の1つは、大学生のような男女のグループで埋まっている。


そして、カウンター席に一人座る男性は私に背を向けているけど、中さんなのだと分かる。
昨日と同じように、スーツ姿。


「いらっしゃい。
お好きな所にどうぞ」


多分、この人が中さん達が言う修司さんって人なのだろう。
中さん達よりも、うんと年上に見える。


「えっと、じゃあ中さんの横に」


私のその言葉に、驚いたように中さんは振り返った。
やはり私はこの人が好きなのだとその顔を見て確信する。
胸がドキドキとするのだけど、妙に安心してしまう。


「お前…。照に聞いたか?」


この場所の事だろうか?


「いいえ。千里さんから」


「千里が?」


千里さんが教えたのが意外だったのだろう。
私も、千里さんよりも照さんの方が口が軽そうな印象があるから分かる。


「あ、もしかして、照君が昨日言ってた子?
中君に一目惚れしたっていう」


「本当、勘弁して欲しいです」


中さんは、私に背を向けて修司さんにそう言っている。
うんざりした顔してるんだろうなって思う。