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「お疲れ様です」
そう言って、オーナー室のドアを開いた。
つい少し前に、秋山店長からもう今日は上がっていいと言われた。
時計を見ると夜の22時で、お店は深夜の1時迄らしいので、
まだまだ営業中という感じで賑わっている。
「気を付けて帰れよ」
意外にそうやって千里さんから優しい言葉が返って来た。
目線はテーブルの上のノートパソコンに向いているが。
私が部屋から出て行かないからか、私に視線を向けて来た。
「さっさと帰れ」
千里さんは首を動かし凝りを解すと、ソファーに凭れた。
「指名1つでも取れたら行き付けのお店を教えてくれるって約束、覚えてますか?」
「ああ。秋山が言ってた。ジュリの枝客がお前を指名したって」
「なら、教えて下さい」
「お前らが居たあのバーから歩いて5分くらいの場所だ。
店の名前は、"dawn"」
「ドーン…夜明け」
それが、お店の名前。
「後は自分で調べろ。
その店に毎日のように通ってたら、中にはすぐ会える」
じゃあ、近いうちに中さんに会える!
でも、中にはって言い方だと、中さんだけがそのお店に頻繁に通っているのだろうか?



