「は?カズ君だ?
今この店に残ってんのは、お前らだけだろ?
お前らだって、飲み食いしただろ?
まさか、無銭飲食するつもりか?」


「でも…」


カズ君が、俺が奢るから飲みに行こう、って言っていて。


隣の萌香を見ると恐怖からか泣き出していて。
私もなんだか泣きたくなる。


「とりあえず手持ちの金がないなら、お前ら借用書にサインして帰れよ?
稼げる店も、紹介してやるから」


借用書…?
稼げる店?


大学進学を機に、S県から都会に出て来て約2ヶ月。


一体、何故こんな窮地に陥っているのか?


「そういう事してくれんな、って、前から言ってんだろ?」


店の奥の通路から、一人の男性がこちらへと向かって歩いて来る。


その男性はとても背が高くて。
足が長くてスタイルが良いのもそうだけど、なにより顔が良い。
最近のアイドルグループとかに居そうな爽やかな感じ。


髪は真っ黒で、上着は脱いでてワイシャツにネクタイだけど、サラリーマン?