朝なけに

「新人のアカネでーす」


秋山さんに言われたように、とにかく元気よく。


「アカネちゃん、何飲む?」


ナンバーワンキャバ嬢ジュリさんのそのお客さんは、優しそうな中年男性。


「じゃあ、カンパリオレンジで」


覚えたばかりのカクテルの名前を口にする。
事前に、秋山店長に私はまだ二十歳になっていないのでお酒を飲めない事を伝えている。
なら、カクテルを注文してくれたら、私の飲み物は全てジュースか、ノンアルコールのものをお客さんには内緒で出してあげるから、と言われている。


暫くして来たその実はただのオレンジジュースのカンパリオレンジで、そのお客さんとカンパイする。


「アカネちゃん、まだ高校卒業したばかりで若くて可愛いでしょ?
山本さん、若い子好きでしょ?」

ジュリさんは、その山本さんというお客さんにそう私の事を言っている。


それにしても、ジュリさんびっくりするくらいの美人で。
やはり都会って凄い所なのだな、と思わされた。


ちなみに、ジュリさんは25歳で5歳の娘さんのいるシングルマザーらしく、仕事中は一緒に住んでいるジュリさんの両親が娘さんを見てくれているらしい。
さっき、裏でちょっと話した。
もちろん、子供が居るのはお客さんには内緒でね、と言われている。


なんでそんな話になったかと言うと、ジュリさんのその娘さんと私がとても似ているらしく、そんな私の事が可愛いらしい。



「その借金返したら、夜の仕事は辞めなさい」


と、どこか母親のような口調でジュリさんに言われた。
このお店に入った理由を訊かれ、昨日あった出来事をジュリさんには話したから。


「そのオーナーの友達の加賀見中さん。
私顔分かるから、もし町とかで見掛けたらアカネちゃんに連絡してあげる」


ジュリさんとはその流れでLINEの交換をした。