朝なけに

「父親の事は別に隠したい事でもないから。
ほら?若くで産んでるから、デキちゃってなんだけど。
珠理奈の妊娠が分かる前に、アイツ亡くなって」


「亡くなってって、えっと…」


それって、死別…。


「妊娠が分かる前だったから、籍入れたり認知とかもされてないけど、珠理奈はアイツの子供で。
そうやってアイツが亡くなって…、妊娠が分かって周りから堕ろせとか散々言われたんだけど、私は絶対産むって。
あの時は後先考えず感情だけで産むって言ってて。
実際産まれて凄く大変だったけど…。
でも、珠理奈を産んで良かった」


沙也加さんは優しい顔で珠理奈ちゃんを見つめていて、それに気付いた珠理奈ちゃんも、ニコリと沙也加さんに笑い返している。
そんな光景を見ていて、目頭が熱くなって来る。


「珠理奈ちゃんのお父さんはどんな人だったんですか?」


きっと、沙也加さんは今でもその人の事が好きなのだろう。


「珠理奈の父親は…、ちょっと素行が悪くて。
同じ年の幼馴染みだったんだけど、昔から悪い事ばっかしてて。
高校も入学してすぐに辞めてしまって。
けど、それからは真面目に働いてたんだけど、悪い仲間との付き合いは辞めてなくて。
だから、喧嘩で亡くなったんだけどね」


「え、喧嘩…ですか?」


聞いてる感じ、珠理奈ちゃんの父親は、不良とか中さんみたいに半グレとかみたいな感じなのだろうか。
そして、喧嘩って…。