朝なけに

そうやって、大学では嫌な事があったけど。


「葵衣ちゃん久しぶり!」


「ジュリさん、お久し振りです!」


大学の後、S町駅近くでジュリさんと待ち合わせ。


「私、本名沙也加(さやか)だから。ジュリじゃなく沙也加って呼んで?」


「あ、すみません。では改めて。沙也加さんお久し振りです」


「うん。こっちが娘の珠理奈(じゅりな)」


ジュリさん改め、沙也加さんの右横には小さな女の子が居る。
この子が沙也加さんの娘さん。
確か5歳だったかな。


「じゅりな…ちゃん?」


「そうそう。私の源氏名、娘の名前の一部から取ってて。
どんな時もこの子の母親である事を忘れないように。
ほら?ホステスとかしてたら、男の人から優しい言葉掛けられて、もうそれに甘えてすがってしまいたくなる時とかあるんだけど。
珠理奈の事を思い出す度に、私は母親だから一人でしっかりしないとって」


「そうなのですね」


私は母親になる事がまだどんな感覚なのかは分からないけど。
きっと大変で。
誰かに助けて欲しくなる時もあるんだろうな。


「ほら、珠理奈挨拶は?」


「珠理奈です。こんにちわ」


そう可愛い声で挨拶されて、自然と笑顔になってしまう。
美人の沙也加さんにそっくりでとても綺麗な顔をしているのだけど、雰囲気もとても可愛い。


「葵衣です。珠理奈ちゃん、よろしくね!」


私がそう言うと、警戒して固かった珠理奈ちゃんの顔が少し綻んだ。
本当に可愛い!