「私も、中さんにとっての真湖さんの代わりは辞める。
もう中さんとは会わない。
LINEも消す…」


私がこの人の前から消えたくらいじゃあ、真湖さんからこの人を救う事は出来ないだろうけど。
でも、中さんが真湖さん以外の女性と会うのは荒れてなのだと、前に千里さんが言っていたから。
だから、私の分だけでも、中さんがそうやって自暴自棄になる事を辞めさせたい。


「中さん、色々とごめんなさい。
あなたが私と時々会ってくれるようになったのは、私の気持ちが中さんには分かるから。
中さんはきっと私に自身を重ねたんですね?
そんな私を冷たく出来なかった」


そう言って、出口の方へと歩いて行く。


"――中さんが、欲しいんです。
私のものにしたいです――"


初めて中さんの部屋に行った時の、私のその言葉。
きっと、中さんは同じ事を真湖さんに思っているのだろう。


「…待てよ」


中さんの横を通り過ぎる瞬間、腕を掴まれるけど。


「離して下さい」


そう振りほどくと、その中さんの手は簡単に離れた。


さよなら。
それは言葉にならず、涙と一緒に溢れて来て。


私はすぐに店から出た。




少し歩いて、立ち止まる。


「…オレンジジュースのお金、払ってない」


それは修司さんがご馳走してくれるんだっけ?
それとも、私がちゃんと払うんだっけ?
思い出せないな。


それにしても、夜の空ってこんなにも暗いのか。
今夜は雲っているのか、月も出ていない。


近くの歓楽街はキラキラとしているのに。