「まさか閣下がこんなことになっているとは知らず……」
「そうですよ。貴族や官僚どもならともかく、おれたちは閣下の家族も同然です。閣下のしあわせは、おれたちのしあわせなのです。こんなめでたいことを黙っているなんて、皆も怒りますよ」

 ウイリアムとトリスタンは、わたしからウオーレンへ視線を向けた。

「い、いや、だから違う……」
「それで、いつですか?」
「は? ウイル、なにがだ?」
「閣下、きまっているではないですか。婚儀ですよ、婚儀。当然、おれたちも呼んでもらえますよね?」
「バカだな、ウイル。皇族の婚儀に、おれたちのような下賤の者が呼ばれるわけがないだろう? それでなくても差別されまくっているのに。そうだ。皇族の婚儀とは別に、街の教会でやってはいかがですか? 街の人たちも祝いたいにきまっていますから」
「おお、それはいい考えだ。トリスタン、おまえにしては上出来だ」
「だろう?」

 二人は、顔を見合わせてさわやかに笑っている。

 まるで戦争が舞台の青春物の小説のワンシーンみたい。