「いや、その……。そ、それはちが……」
「ええええっ! 閣下、どうなさったのです? そんなに照れないで下さいよ」
「そうですよ。泣く子だろうとうるさい大人だろうと黙ってしまうほどの歴戦の勇将たる『銀仮面の獣将』が、照れまくっているなどとはかわいすぎますよ」
「おいっ、トリスタン。いくらなんでも閣下に向って失礼すぎるだろう?」
「だったら、ウイル。おまえのそのニヤニヤ笑いも失礼すぎるぞ」
「だよなー」

 二つの青年の笑い声が、古びた宮殿に花を添える。

 話題が、わたしとまったく無関係だったらよかったのだけれど。

「いや、二人とも。だから、ちがう……」
「閣下、もちろん紹介してもらえますよね?」
「いらっしゃるのですよね? いま、この宮殿に?」
「あ、ああ、ああ。茶を淹れに行っている」
「おおー!」
「わお!」

 拍手がきこえてきた。

 なんてこと。執務室に入りにくいじゃない。