うまくいけば、彼は今日一日ここを離れるかもしれない。そこまでではなくても、わたしとすごす時間はないかも。

 とりあえず、少しだけでも彼と距離を置きたい。というか、ほとぼりがさめるまでそっとしておいてほしい。

 いずれにせよ、お茶くらいは淹れないと。一応、侍女だから。部下とはいえお客人だから、お茶くらい淹れてあげないとただの「タダ飯食らい」になってしまう。

「きみが?」
「きみがって、当然わたしですけど。それが何か?」
「ま、まぁお茶くらいなら……」
「なんですって?」
「い、いやなんでもない。だったら、部下は二人来ている。悪いが、お願いするよ」
「任せて下さい」

 拳で思いっきり胸をドンと叩いたら、痛すぎた。

 むせ返りながらウオーレンを見た。

 銀仮面の下に、笑みを浮かべていた。