ある程度料理をお腹に入れると、お腹の虫とわたし自身が落ち着いてきた。そうすると、「食べる」ことに余裕がでてくる。ということは、「食べる」ことを楽しむことが出来る。

 ウオーレンの料理というか調理というか、そういうことに思いを馳せることも出来る。

 いまのところ、もといた宮殿の料理人ほどの複雑な料理やスイーツは出てきていない。だけど、それなりではある。彼の料理は、昨夜の食堂の料理と同じで素朴だけどあたたかい。このあたたかいというのは、物理的や体感的にではない。心がこもっているという意味である。

 宮殿の料理人たちは、いい食材をどれだけ見栄えよく出すかにこだわっている。その食材がどうなろうがどうでもいい。食材そのものの持ち味や栄養が失われたとしても、彼らはそんなことは意に介さない。

 だけど、ウオーレンや食堂は違う。見てくれなんてどうでもいい。とにかく、食べる人のことを考えている。食べる人が「美味しいね」としあわせになれるように作っている。どれだけ偏屈で頑固で変わっている人でも、笑顔にならざるをえない。