「ほら、きみの腹の虫は腹をすかせている」

 扉の向こうからきこえてきたのは、笑いたいのをガマンしているような声だった。

「ど、どうぞ」

 こうなったら腹をくくるしかない。その腹にいる虫の為に。いずれにせよ、お腹を満たさないことには何も始まらない。

 入室を許可すると、ウオーレンはいそいそと入ってきた。

 彼は、わたしがもといた宮殿で侍女たちが使っているようなワゴンを押している。

 それが入ってきた途端、いいにおいが漂ってきた。具体的には、コーンスープと卵とベーコンとジャガイモのフライと焼きたてのパンとフルーツのにおいである。

 それと、スイーツのにおいも。

 ワゴンの上下段の棚に、ところ狭しと料理やバスケットや食器類が並んでいる。

 ウオーレンは、テラスまでワゴンを押して行くと支度を始めた。

 一応、わたしも手伝おうという意志表示はみせておいた方がいいわよね。