「コンコンッ」

 そのとき、背後で大きな音がした。

 ムダに大きすぎたその音に、文字通り飛び上がってしまった。

「マキ、起きているんだろう?」

 客間の扉の向こうから、ウオーレンの声がきこえてくる。

 ど、ど、ど、どうしよう。

 ドギマギしてしまう。

 だって、まだ心の準備が出来ていないから。

「ウ、ウ、ウオーレン、ウオーレン様?」

 やっとのことで反応は出来たけれど、自分でも「気持ち悪っ」といいたくなるほどソプラノボイスだった。

「庭からガラス扉が開いているのが見えたんだ。朝食を持って来た。よければ、今朝はきみの部屋のテラスで食わないか?」
「グウウウウウウウッ!」

 朝食というキーワードが出た瞬間、お腹の虫が騒ぎ始めた。

 な、なんなのよ、まったくもうっ!

 口から手を突っ込み、お腹の虫をひきずりだしてボコボコにしてやりたい。