古びた宮殿に帰ると、ウオーレンはわたしを客間の寝台に寝かせて眠りにつくまで寝台の脇の椅子に座っていた。

 彼は、一言も話さなかった。ただ黙っていた。

 ときおり、大きくて分厚い手で頭を撫でてきた。

 その行為は、上の空というかボーっとしているというか、そんな中でどこか懐かしく感じられた。

 気のせいだったに違いない。

 でも、不思議と落ち着けた。それから、安心出来た。

 だから、そう時間を要することなく眠りに落ちていた。

 翌朝、パチッと目が覚めた。

 視線だけ寝台の周囲へ走らせた。
 さすがに彼の姿はない。

 きちんとカーテンを閉めてくれている。カーテンとカーテンの隙間から、朝の陽の光が射し込んでいる。

 ゆっくり起き上ると、とりあえずガラス扉に近づいてカーテンと扉を開けた。

 うん。今朝は早い。

 早朝の独特のにおいが鼻にまとわりつく。

 両腕をおもいっきり空に向けて上げ、伸びをした。

 それから、お風呂に入った。

 鏡を見て腰を抜かしそうになった。