だけど、それももうしばらくの間のことよ。

 いまはまだムリだけど、かならずや復讐を果たしてみせる。

 復讐したところで、家族や知人たちや国民たちなど奪われたすべてが戻ってくるわけではない。

 それでも、やらなければならない。

 ウオーレン・シャムロックからすべてを奪い、そして、命を奪うのよ。

「マキ、少しは落ち着いたか? こいつら以外にもおれを狙うやつはいる。そいつらがやってこないうちに、皇宮へ戻ろう」

 なにも答えられない。それどころか、気怠すぎてどうでもよくなっている。

「ほら」

 彼は、背を向けると両膝を折った。

「おぶっていくよ。まさか、お姫様抱っこというわけにはいかないからな」

 拒否しようと思った。そのまま足蹴にしてやりたかった。

 だけど、そんな気力はない。

 だから、彼のムダに大きな背中に身をあずけた。

 彼は、ゆっくり立ち上がりると歩き始めた。その軽快さは、普通に歩いているときと遜色がない。

 彼のうなじあたりに頬をくっつけた。

 涙が勝手に溢れてきて流れ落ち、彼の上着の襟を濡らす。

 泣いていることが彼にバレてもいいと思った。いつもだったら、絶対にイヤだけど。

 なぜかこのときは、涙を流していることがバレてもいいと思った。

 泣き疲れ、眠ってしまった。

 彼のムダに大きな背中は、とても暖かかった。