「マキ、怖い思いをさせてすまなかった」

 ウオーレンがまた抱きしめてきた。

 先程、彼がわたしを抱きしめてきたのは、襲撃者たちを油断させる為だったのだと頭のどこかで考えた。

「すまなかった」

 やさしい声が落ちてきて、わたしの短い黒髪にあたった。

 つい先程とは違い、今度は包み込むように抱きしめられている。

 今度は抗う気力がない。だから、されるがままになっている。

「あんな方法で撃退すべきじゃなかったんだ」

 彼は、ささやき続ける。

「きみに暴力を見せたら、きみはおれを嫌悪する。だから、見せたくなかった。だが、心のどこかにきみにカッコいいところを見せたいという気持ちもあった。そのような感情は、子どもじみていて愚かなきわまりないな。やはり、おれはダメな男だ。『銀仮面の獣将』という異名のままだ」

 ささやき続ける彼に、いろいろなことを言ってやりたい。

 そうよ。その通りよ。あなたは、人を傷つけることしか出来ない最低な人間よ。暴力をふるうことしか能のないクズよ。

 あなたは、これまでもこれからもずっと暴力の中で生き続けるのよ。

 あなたには、それがお似合いだわ。