「マキ、大丈夫か? まさか、ケガをしたとか?」

 そう声をかけられ、自分がわが身を抱きしめていることに気がついた。

「真っ青だぞ。す、すまない。やはり、きみの前で暴力をふるうのではなかった。気が進まなかったが、きみはそれで納得しないと思った。おれの判断ミスだ」

 彼は、転がっている男たちをさえぎるようにしてわたしの前に立った。

 それでも、彼の足の間から男たちの苦悶の表情が見えてしまう。

 ますますわが身を抱きしめてしまう。

 子どもの頃と同じように……。

 ウオーレンにすべてを奪われたとき、家族も含めて多くの人たちが同じように苦悶の表情を浮かべていた。

 それを見たくなかった。だけど、見なくてはならなかった。

 その光景を、瞳と脳裏にしっかりと焼き付けなければならなかった。

 ウオーレンに復讐を果たす為に。

 だから、わたしは自分自身を抱きしめ必死に耐えた。耐えながら、あの悲惨な光景を見続けた。