皇宮にやって来てから、休みになる度に行ってもいい場所には行ってみた。皇宮内には、けっして立ち入ってはいけない場所がある。もちろん、そういう場所には行かない。ちょっと通りかかったり、なんてことはあるけれど。
 そういう場所は、直接自分に関係なければリスクを冒してまで行く必要はない。

 少なくとも、いまのところは。

 いまから行く場所は、一度も行ったことがない。というよりかは、そんな場所があるとはまったく知らなかった。さらには、こんな遠い場所にこんなものがあったとは知りようもなかった。

 そこは、皇宮ってどれだけ広いのよって怒鳴りたくなるほど宮殿から離れている。これが馬や馬車ならそうでもないのかもしれない。

 荷物はトランク一つとはいえ、テクテクとこれだけ歩かされれば大岩でも待たされているように感じられてくる。

 森の奥の奥に石造りの立派な宮殿が見えてきたのは、もう少ししたら森の中で野宿を検討しなければならないのでは、というような宵闇迫る頃だった。

 侍女長の話では、まだこの帝国が出来た頃には、この石造りの宮殿がほんとうの意味での宮殿だったらしい。その頃には、まだまだ帝国内が不安定で宮殿というよりかは要塞として使われていたという。
 帝国が完全に統一された後、皇族はあらたに宮殿を建ててそちらに移った。

 それが、わたしがこれまでのいた宮殿である。

 それにしても、ウオーレン・シャムロックはどうしてわたしを侍女に指名したのかしら。