皇宮へと向かっているけれど、二人とも無言を貫いている。

 食堂をでたばかりの頃は多かった人通りも、まばらになってきた。

 彼の背中を見つめていると、あらためて怒りがこみあげてくる。

「ウオーレン様っ!」

 でっかい背中にやわらかく呼びかけると、彼の背中がビクリと震えた。

「マキ、わかっている。わかっているから、いまは黙っていてくれないか」

 彼は、振り向くことなく言った。しかも、歩く速度を速めて。

「うしろに五人組がいるだろう? 連中、おれを狙っている」
「なんですって?」

 驚いたけれど、パッとうしろを振り向くようなドジなことはしなかった。

「連中は、おれたちが皇宮にいたるまでに襲ってくるだろう」
「だったら、さっさとやっつけて下さい」
「あまり気が向かないな」
「はあああ? ああ、そうですね。五人いるから、自信がないのですね」

 ウオーレンったら、いままでの言動のわりにはずいぶんと気弱なのね。

 それとも、この図体や銀仮面は見せかけているだけなのかしら。

 心の中でせせら笑った瞬間、彼が立ち止まった。

 おっと。今度はぶつからないわよ。

 急ブレーキをかけてぶつからずにすんだと思いきや、彼がこちらへ体ごと向き直った。だから、わたしの身体と彼のそれが接触してしまった。