店主もその奥さんも、「健康的な食べ方だ」と言って褒めてくれた。

 そして、ここでもまた服屋のときと同じことが起った。

 つまり、わたしが何者かと問われたのである。

 具体的には「閣下の婚約者なのかど、そうでなかったら衆人環視の中でやわらかく指摘していたでしょう。

「そ、そうなんだ」

 ウォーレンは、またしても罪を犯した。 
 平気で大嘘をついたのである。

 信じられない。
 銀仮面をひっぺがし、どの面下げて言うのか拝んでやりたくなった。

 とはいえ、お腹がいっぱいになってしあわせに浸っているときだったので、彼に目線で「メッ!」をするだけにとどめた。だけど、そうでなかったら衆人環視の中でやわらかく指摘していたでしょう。

 ウォーレンは、わたしの静かなる怒りに気づくことなく店主やその奥さんや食堂の客たちに揶揄われていた。

 そうして、嘘に塗り固められた関係のわたしたちは、食堂を出て帰途についた。