「閣下、しっかり者の奥さんですね」
「閣下、奥さんの尻に敷かれてますね」
「なにを言っているのよ。閣下はちょっと頼りないところがあるから、お嬢さんみたいな強い女性がちょうどいいのよ」
「そうよそうよ。だいたい、世の男性は自分こそが正しい。われこそが正義だって勘違いしすぎているのよ」
「なんだと? 女なんてのはな……」
「なんですって?」

 見物人たちは、ずいぶんと盛り上がっている。

 すごいわね。これが、街のごくふつうの光景なのね。

「お腹が減って死にそうです。はやく行きましょう」
「あ、ああ、ああ」

 彼を急かし、その場をあとにした。

 ヒートアップしまくっている人々の喚声が背中にあたった。