ウオーレンの部下の一人の実家が服屋を営んでいて、彼はそこに案内してくれた。
 皇宮の森の奥の方に地下水路に入ることの出来る階段が隠されていて、そこから地下通路を経由して皇宮の外へと出た。

「閣下。お久しぶりです」
「閣下。あらまあ、可愛らしいお嬢様ですね。閣下のいい人なのですか?」
「閣下、また寄って下さい。安くしておきますよ」
「閣下、また相談にのってもらえますか?」

 すれ違う街の人たちは、ウオーレンに挨拶をしたり声をかけたりしている。

 街にやってきてからは、命令通り彼にくっついている。不本意きわまりないけれど。
 街の人たちは、わたしにも声をかけてくれる。だから、愛想笑いを返しておいた。

 服屋は、ほんとうに街の服屋だった。高価でも豪勢でもない、一般庶民向けの服屋である。

 正直、ホッとした。ドレスなんて買われた日には、着こなしなんかで正体がバレてしまうかもしれないから。
 とはいえ、最後にドレスを着用したのは子どものときだった。それでも、持って生まれた素養とか品位は、けっしてなくならない。

 元王女なのですもの。ちゃんとした恰好をすれば、おのずと王女然としてしまう。

 ウオーレンなんて、それを見たらひれ伏すかもしれないわ。