「ええっ? いくらウオーレン様が嫌われたり憎まれているからって、殺すほどなのですか? でしたら、よほど嫌われているのですね。わたしは、いろんな場所でいろんな人に接してきました。ですが、相手がどれだけ不愛想で不躾で乱暴な人だとしても、殺したいほど嫌いになったり憎かったりなんてことはありません」

 いまのは嘘ではない。これまで、殺したいって思うような人に出会ったことはなかった。

 当然、ウオーレンはのぞいてだけど。

「え? あ、いや、好き嫌いとは関係がない……」
「あなたを殺したいって思っている人が大勢いるのですもの。大勢の人たちにそれだけ嫌われているなんて、もはや人間(ひと)として終わっているって感じですよね」
「い、いや、マキ。だから、違うって……」
「とはいえ、わたしはあなたに雇われている身です。ご命令どおり、街ではあなたにくっつくようにします。まあ、それ以外は距離を置かせてもらいますが。それにしても、でかい図体に銀仮面ですものね。(まと)として、これほど目立つのってないですよね。暗殺者とか請負人も、わざわざ探さなくてもすぐに見つけることが出来てラクなはずですよ」
「いや、そういう問題では……」
「さっ、さっさと行きましょう。お腹も減ってきました」
「昼にサンドイッチをあれだけ食べただろう?」
「それはお昼のことですよね。いまは夕方になりつつあります」
「わかったわかった。服を買ったら、いいところに案内するから」
「だったら、はやくはやく」

 というわけで、急ぎに急いだ。