「あら、ストーム。わたしなら大丈夫よ。心配かけてごめんね。なんですって、ストーム? わたしを乗せてくれるの?」

 ストームの両耳が動いている。

 小説で読んだことがある。

 馬は、耳で会話をするのだということを。

「えっ、いいの? うれしいわ。では、明日ね。楽しみにしているわ」

 明日、ストームが乗せてくれると言っている。なぜかわからないけれど、そう感じた。

「じゃあ、明日ね。そうと決まれば、お腹がすいてきたわ」
「それでは、夕食を作るとしよう」
「ウオーレン様、当然です。ここが終ったら、夕食の準備をしましょう」

 ウオーレンの雰囲気が明るくなった。

「では、急いで用事をすませよう」
「早くして下さい。あっ、ウオーレン様」

 彼に近づくと、おもいっきり背伸びした。そして、手もおもいっきり伸ばした。彼の金髪にくっついている藁を取ろうと思ったからである。