「彼の名は、『ブラック・ストーム』。ストームと呼んでいる」
「なんてことなのかしら。そのままではないですか。なんの面白みのない名前ですね。きっと、ウオーレン様がつけたのでしょう?」
「あ、ああ。すまない」
「謝るのはわたしにではなく、ストームに対してではないですか? せっかく雄々しく美しいのに、単純な名前で呼ばれるって彼を愚弄しているようなものです」
「あ、ああ。ストーム、すまない」
「ブルルルルルル」

 ストームは、鼻息荒く怒っている。

 すると、ストームがわたしの頬に鼻先を押し付けてきた。

「うわあああっ! なにこれ? フニフニしていて気持ちがいい」
「そ、そうだろう? 馬の鼻先は、フニフニしていてやわらかいんだ」
「どこかの銀仮面とは違いますよね? 銀仮面なんて押し付けられでもしたら、痛いし冷たいにきまっています」

 にこやかに事実を述べると、ウオーレンの体がびくりとした。なぜかはわからないけれど。

「とっても人懐こいわ」

 ストームの鼻筋をなでてやると、彼はせがむようにして頭を近づけてくる。

 可愛すぎる。馬房の中に入り、ご要望に応えてあげた。