パーティーでちょっとした失敗をやらかした後、大廊下の床磨きを任されるようになった。

 大理石の床を、一日かけてピッカピカに磨くのである。四つん這いになり、一心不乱に磨き上げると気分がすっきりする。
 多くの官僚の頭よりもピッカピカになった床を見ると、よりいっそうすっきりする。

 他の侍女や使用人たちは、そんなわたしを見てひそひそと話をしている。

 きっと床磨きは完璧だと、褒めてくれているのね。

 まぁ、ときどきやらかしてしまうけれども。

 今朝も誤ってバケツをひっくり返してしまった。タイミングよく、そこに宰相が通りかかった。

 驚くべきことに、宰相はひっくり返ったバケツの汚れた水で両足を濡らしてしまったのである。正直、これには驚いてしまった。

 わざと濡れる位置に足を運ぶなんて器用すぎる。

 彼は、皇帝や皇太子に会いに行くところだったらしい。彼は、靴もズボンもびしょびしょの状態で、顔を真っ赤にして怒鳴っていた。だから、すぐに彼のズボンの裾と靴を拭いた。それなのに、彼はよりいっそう怒ってしまった。
 
 どうやら、雑巾で拭いたのが気に入らなかったらしい。

 誤解を解く為に、その雑巾はひっくり返したバケツで洗ったばかりだと彼に伝えた。が、火に油を注いだだけだった。

 侍女長が飛んできて、ひたすら謝罪した。一応、わたしもそれにならった。

 たしかに、バケツをひっくり返したのはわたしが悪いのだから。