内心では、ウオーレンとの不毛な会話をいますぐにでも打ち切りたい。それなのに、彼はまたしても黙りこくっている。

「あのー、ウオーレン様っ! きいてます?」
「あ、ああ、ああ。行ってはいけない場所や入ってはいけない部屋は、とくにないが……」
「でしたら、これで失礼します」

 手すりから身をはなし、部屋に入ろうとした。

「マキ、待ってくれ」

 すると、彼が下から叫んできた。

「なんでしょうか? すぐにでも食堂に行ってサンドイッチをゲットしたいのですけど」

 仕方がないので手すりまで戻り、そこから身をのりだした。

「い、いや。やはりいい」
「変なウオーレン様」

 上から見おろす彼は、イジイジもじもじしているように見える。

「あ、そ、そうだ。おれは、ここで庭仕事をしている。何かあったら呼んでくれ」
「たぶんないと思いますけど、了解しました」

 今度こそサンドイッチにありつける。

 どんなサンドイッチかしら。具は何かしら。

 そんなことを考えると、力いっぱい笑顔になる。彼にもお裾分けのつもりでそれを振りまいてみた。

 そして、笑顔のままで室内に入った。

「マキッ、待ってくれ。おれの話を……」

 ウオーレンが何か叫んでいるみたいだけど、すでに心はサンドイッチに占領されている。

 サンドイッチにくらべれば、彼なんてどうでもいいわよね。