だだっぴろい広間の奥の方に、長いテーブルが見える。

 小走りで彼を追いかけながら、食堂内の様子を観察した。

 少しだけ食べ物から気をそらすことが出来ている内に、状況を把握しておかないと。

 だけど、食堂内は観察するほどのものではない。食堂は、食べることがメインの部屋である。だから、それに関するもの以外に何かあるわけがない。絵画や彫刻を飾ったり置いたところで、じっくり鑑賞するような余裕はないでしょう。

 料理は、長テーブルの上座に向かい合わせでセッティングされている。

 ウオーレンは、片側の椅子をひいて待ってくれている。

 なぜかしおらしい態度をとりたくなった。

 その理由は、けっして食事を分け与えてくれるからというものではない。

 彼が紳士らしくふるまってくれているから、自分もレディであらねばと思ったからである。

 近づきながら、あらためて彼を上から下まで観察した。

「うそっ! なにそれ?」

 彼の恰好を見た瞬間、言葉が勝手に口から飛び出していた。

 銀仮面でカッコつけている上にガタイのいい彼が、真っ白いエプロンをつけているのである。しかもその真っ白いエプロンは、わたしたち侍女のエプロンにでさえないフリフリが裾や胸元を飾っている。