「そうだな。欲や野心のないおまえには、民衆の為の皇帝にはなれても貴族たちの君主にはなりえないだろう。軍でお山の大将っぷりを発揮するのがせいぜいかもしれぬな」

 メイナードの嫌味も、ウオーレンはきき慣れているみたい。無言で流してしまった。

「マキ、会えてよかった。それから、ウオーレンのところに来てくれてありがとう。また、ゆっくり話をしよう」

 メイナードは、気持ちを入れ替えるかのように手を差し出してきた。その手をがっしり握り、上下にブンブンと振った。

 メイナードの手も火傷の跡だらけ。

 だけど、とてもあたたかい。

「ウオーレン。彼女にすべてを話したのだ。ついでに約束を果たすべきだな」
義父(ちち)上、それは性急な……」
「性急なだと? 十七年の歳月は、けっして性急ではない。それどころか、遅いくらいだ」

 メイナードは、謎めいた言葉とともにウオーレンの肩を叩いた。

 それから、去って行った。