夜気に身震いしてしまった。厚手とはいえ、さすがにブラウス一枚では寒い。カーディガンでもはおってくればよかったかしら。

 とはいえ、私服はほとんど持ち合わせがない。ブラウスもスカートもズボンも、あまりにも着倒しているので生地が薄れたりテカテカになったりしている。上に羽織る物も、ほつれて毛玉だらけのカーディガンと黄ばんでツンツルテンのコートが一枚ずつあるだけである。

 わたしの悲願は、ウオーレン・シャムロックを殺すこと。だから、その悲願を達成する為に皇宮に勤めなければならなかった。まぁ勤めている理由は別にしても、こういう雇用先にはかならず制服がある。

 制服は、ありがたすぎる。

 そこで、ハタと思いいたった。

 制服は、もともとの宮殿に置いてきてしまった。

 侍女長から、置いていくよう言われたからである。

 よくよく考えてみれば、どうして置いてこなければならなかったのかしら。

 一応、あたらしい配属先も同じ皇宮内で同じ雇用者からお給金をいただけるはず。

 それならば、制服も同じでいいのではないかしら。

 それとも、ウオーレン・シャムロックは、自分専属の侍女には何か特別な制服でも準備しているとか?

 なにかそういう奇抜な趣味でもあるのかしらね。