「マキ、きみが無事でよかった」

 メイナードは、ベレー帽を指先で上に上げた。

 髪の毛も燃えてしまったらしく、ベレー帽をかぶっているに違いない。

「マキ。宰相は、きみの正体を知っていると言ったのだろう? おれも知っているんだ。いや、おれたち、かな?」

 ウオーレンが静かに口を開いた。

 三人でクッキーとお茶を堪能した後にである。

養父(ちち)上とおれも、きみのことを知っている。というよりか、きみをやっと見つけた。その上で、きみが皇宮での職を探していることを知り、働けるよう手をまわした。きみは、おれを殺す為にここにやって来た。そうだろう?」
「ええ、そうです」

 ウオーレンが、わたしの正体や目的を知っていることに驚かなかった。

 違うわね。驚かないふりをした。

 宰相が知っているくらいですもの。ウオーレンが知っていてもおかしくない。

 そうよね?

「マキ。まずはきいてほしい」

 メイナードが語り始めた。

 ここは、おとなしくきくべきところよね。