だから、宰相がどうしてわたしを利用しようとしたのか、彼は詳細を知りようがない。ふつうは、そこも疑問を持つはずだった。

「ああ、そのことか」

 彼はお皿を棚に戻し終え、こちらを向いた。

 銀仮面の下には、なぜか気弱な笑みが浮かんでいる。

「そうだな。もう客人が来る頃だ。話をしてもいいだろう。どうだい? お茶とクッキーを準備してテラスへ行き、そこで話をしないか?」

 気になるけれど、お茶とクッキーの誘惑には勝てない。

 ウオーレンは、朝一番からチョコチップやジャムや砕いたナッツ入りのクッキーを焼いてくれた。

 どれもわたしの大好物。彼は、そのわたしのリクエストに応えてくれたのである。

 お茶とクッキーをテラスに運んだタイミングで、その客人がやって来た。