「宰相め。マキを暗殺者に仕立てるなど、見境がなくなっているようだな。あるいは、失敗の記録を更新したいか、だな」
「そうですよね。レディに毒を持たせるだなんて、勇気のいることです。その点では褒めてやらないと」
「それはいえているな。だが、それ以上にレディを信じるなどとは。宰相は、皇太子殿下によほどプレッシャーをかけられているのかな」

 ウオーレンとウイリアムとトリスタンは、どうやらわたしのことを気の毒な侍女だと言っているみたい。
 軍人三人でこうして面付き合わせていると、むさ苦しさが半端ないわね。

 それはともかく、情報共有後に四人で策を練った。

 ウオーレン暗殺計画を、である。

 そうして、本番を迎えて終えた。

 宰相は、見事にひっかかってくれた。

 死んだウオーレンが生き返ったときの宰相のあの顔ったらもう。

 彼のあのときの表情は、脳裏と瞼の裏にくっきりはっきりじっくり焼き付いた。

 これからの人生で、事あるごとに思い出しては笑ってしまうに違いない。