「では、念のため宰相閣下もどうぞ」
「わ、わたしがか?」

 宰相に羽根ペンを差し出した。

「当然です。宰相閣下も大黒幕でいらっしゃる皇太子殿下に報告が必要でしょう? これだけくすぐっても死んだままだったと報告なされたら、皇太子殿下も『おお、そうか。よくぞやってくれた。ぜひともその侍女に直接会い、金貨の五百枚ほど捧げたいものだ』とおっしゃるにきまっています」
「いや、それはないない」

 宰相は、即座に否定した。

 皇太子殿下って、大黒幕のくせにケチなのね。

「だが、そうだな。わたしもやってみたい」

 宰相はわたしから羽根ペンを受け取ると、嬉々としてウオーレンをくすぐりはじめた。

「おお、これはいい。ぜひともプライベートでも試してみたいものだ」

 宰相は、すっかり夢中になっている。

 彼ったらめちゃくちゃ興奮しているわ。

 年甲斐もなく大興奮状態で、ウオーレンをくすぐりまくっている。

「では、耳も」

 宰相は、こちらがなにも言わないのに一番感じそうな耳を試そうとした。

 表情がいやらしすぎる。

 彼は不快すぎて反吐が出そうなほどのいやらしい笑みを浮かべつつ、ウオーレンの銀仮面をのぞきこんだ。

 その刹那……。