「でもまぁ、いいわよね。お腹が減っているのは間違いないのですもの。いまのままだったら、なにも考えらないわ。とりあえず腹ごしらえをしてから、よね?」

 結論を下すと、それもまた即行動である。

 彼がわたしの部屋だと言ったその部屋に入った。

 ほんとうに客間だった。

 客殿にある部屋と遜色のない広さと設備が整っている。

 わたし、侍女よね?

 またしても疑問がわいてくる。

 やはり、これは罠よ。このあと、ドカーンとでっかい一発があるのよ。

 とんでもないことが待ち受けているにい違いない。

 天蓋付きの大きな寝台、執務机に椅子、長椅子にローテーブル、壁には本棚が並んでいてぎっしり本が詰まっている。テラスもついていて、そこには丸いテーブルと椅子が四脚ある。テラスに出てみると、森が見渡せるのだと予想する。なにせ、暗闇しか見えないから。

 なにより、お風呂と洗面台とトイレがある。

 客殿の各部屋の掃除を担当したことがあった。担当になった初日、一つ目の部屋で年代物の花瓶がサイドテーブルから勝手に転がり落ちた。その花瓶は、どうやらあたりどころが悪かったらしい。

「パーン」という音とともに、木っ端みじんになってしまった。

 その直後、客殿の窓拭きへと昇格した。