「閣下」
「閣下」

 ウイリアムとトリスタンも走ってきた。

 三人そろってウオーレンの銀仮面をあらためて見おろしたとき、彼がすでに息絶えていることに気がついた。

 あっけなく死んじゃったわ。

 宰相が「ドラゴンでも即死だ」と言っていたけれど、まったくのデタラメや盛りすぎではなかったのね。

 冷たいものが、背筋を走った。

 ウイリアムとトリスタンも両膝をついているけれど、かたまってしまっている。

 宰相にそっと視線を走らせてみた。彼は、長椅子から立ち上がりかけたままかたまっている。

「宰相閣下」

 宰相を呼んだ自分の声が、思いのほか緊張感をはらんでいることに気がついた。

 心臓がドキドキばくばくしている。

 宰相からウオーレンに視線を移す。

 銀仮面をかぶっていてくれてよかった。

 さもなくば、苦悶の表情を目の当たりにするところだった。

 それとも、自分になにが起ったかわからなかったようなとぼけた表情をしているのかしら。

 一瞬、彼の顔から銀仮面をはがし、素顔を拝んでみたい衝動に駆られた。