宰相はわたしと話をしている間、「こんなみっともないドレスを着てきおって。なめているのか?」って思っていたのかもしれない。

 そうだとすれば、「毛がおもいっきり残念」よりかはマシよって言いたい。

 ウオーレンも気に入ってくれて、機嫌よく買ってくれたドレスなんですもの。わたしにとってはどんな高級で派手なドレスよりも、ずっとずっと価値がある。

 そのドレスに、肌寒いからカーディガンをひっかけている。

 これがまたあたたかい。この古びた石造りの宮殿だと、これからますます中にいても外とかわらないほど寒くなるに違いない。それを見越し、宮殿内でも羽織れるカーディガンを何着か買ってもらった。

 ポケットから取り出した小さな薬袋を、もう片方の掌の上にのせてみた。

 こんな小さな袋なのに、ずっしりと重い。いいようのない重みを感じる。

 命の重みを。

 この中の一粒を飲み物にでも混ぜて溶かし、彼に飲ませればいい。

 ただそれだけでいいのである。