「マキ・セルデン」

 彼は、五十歳前後くらいかしら。ムダにプライドが高くて、わたしのことをあからさまに蔑んでいた。そして、上の立場の者にはあからさまに媚びを売っていた。

 わたしの一番嫌いなタイプだわ。

「宰相が、『すぐに来い』とおっしゃっている」

 宰相? ああ、あの「毛がおもいっきり残念」な人ね。

「さっさと行け」

 侍従は、彼自身はただの使い走りであって偉くもないのに偉くなったような気分に浸っている。

 黙っていると、居丈高に言ってきた。

「おまえと『銀仮面の獣将』のことで話があるそうだ。なにをしている? おまえごときに拒否権はないんだぞ」

 ふーん。

 そうとしか思いようがない。

 気分だけは偉くなっている彼に、唐突に背を向けた。それから、さっさと中に入って重厚な扉を全力で閉めた。