「ふううっ」

 おもわず息をついていた。

 暗くなって気温が落ちているというのに、汗ばんでいる。

 手の甲で額を拭いつつ、ふと左右を見まわしてみた。

 この扉は全身全霊をもってぶつかっているというのに、ビクともしない。というよりかは、中にいるウオーレンの耳に「ドンドンばんばん」がまったく届いていない。

 こうなったら、岩とかピッチフォークとか扉にぶつけてやりたいわ。

 じーっと重厚な扉を睨みつけながら、思案する。

「なにをしている?」
「うわあああっ!」

 突然、うしろから声がした。驚きのあまり、文字通り飛び上がってしまった。

「な、な、な……」

 腰を抜かさなかっただけまだよかったわ。震えながらうしろを振り返ってみた。

「う、うわああああっ」

 すぐうしろに、何かが聳え立っている。

 具体的には、でかい人である。