【怜央side】
あれは櫻子の病気が再発する少し前、俺たちが高校に入学してから数日が経ったある日のことだ。
同じ電車に乗っていた櫻子が突然、青白い顔をして俺の腕を掴んだ。
「おい、大丈夫か」
俺の言葉に櫻子は首を横へと振った。
車内は多くの人で混み合っていて、移動しようにも場所がない。
最寄り駅まではまだあるが、停車したタイミングで俺は櫻子を連れて電車から降りた。
こんな日に限って、彼氏のあいつは風邪で休みだ。
ひとまず空いていたベンチに櫻子を座らせる。
「救急車か駅員呼ぶか?」
櫻子は幼い頃、心臓に病気を抱えていた。
今は普通に生活を送っているが、子どもの頃から何度も発作を起こす櫻子を見てきた俺は咄嗟にスマホを手に取った。
そんな俺の手を櫻子が掴む。
「だい……じょーぶ。ちょっと人に酔っただけだから」
「本当に大丈夫かよ?」
「今日、暑いから余計に。少し休んだら良くなるから」
「……わかった。なんか欲しいもんは?」
「お水。桃の味がするやつ」
「いつものな。少しの間、離れるけど平気か?」
「うん。ごめんね怜央」



