「痛ッ」
「優しく接するのはもうやめにしたんだ。君はまだ自分の立場をわかっていないみたいだから」
私の目の前で香坂が再びナイフを光らせた。
その時──、
「瑠佳!」と叫ぶ怜央の声と同時に扉が蹴破られた。
絶望しかなかった扉の先から怜央と真宙くんが姿を現す。
「れ……お……」
「瑠佳!……香坂、てめぇ誰に手出したのかわかってんのか」
怜央は一直線に駆け出すと、その勢いのまま香坂に殴りかかった。
人が殴られる現場を初めて目にした私は思わず目をつむる。
次に目を開けた時、香坂の唇は血で滲んでいて手からナイフが滑り落ちた。
それを拾い上げようと手を伸ばしたけれど、あと数センチのところで阻止される。
「危ないだろ!」
私の手を掴んだ真宙くんが珍しく声を荒らげた。
「真宙くん……」
「大きな声を出してごめん。瑠佳ちゃん怪我は?立てる?」
「だ、大丈夫」



