「そうそう。俺、聞き分けの良い子は好きだよ」
「…………」
「また、だんまり?」
「…………」
「今回はちょっとビビらせすぎたかな」
何も話さなくなった私を見て、香坂はタバコに火を着けた。
口から吐き出される煙、パラパラと地面に落ちる灰。
タバコを吸う香坂を横目に見ながら、私は縛られている両手を静かに動かした。
私はここから脱出することを諦めたわけじゃない。
足を拘束するために使用されているのは、縄や結束バンドではなくビニール紐。
おそらく両手の拘束にも同じ紐が使われているのだろう。感覚的には2、3周ってところ?
これなら摩擦を利用して切断することが可能だ。
幸いにも後ろには鉄製の棚がある。
けれど、私が妙な動きをすれば不審がられるに違いない。
ほんの僅かな時間でいいから、この場から香坂を遠ざけられる良い方法はない?
なにか……なにか……!
一度、心を落ち着かせるために深呼吸をする。
その直後、私はとある変化に気づいた。
利用できるものが、一つだけあった……!



