「誰がこんな卑怯な手を使う奴のところなんかに……!」
私の言葉に眉をピクリと動かす香坂。
その表情からは笑顔が消えていた。
「威勢がいいのは認めるけど、あんまり舐めた口聞かないほうがいいよ」
香坂はそう言うとポケットから折りたたみナイフを取り出して、私の頬に当てがった。
ひんやりと冷たいそれはペチペチと音を立てながら、何度も頬にぶつかる。
「ほら、気をつけないと。こうやって危ない目にあうかもしれないからね?わかった?」
香坂は一度ナイフを離して私の反応を窺う。
今は何も言わないほうがいい。
香坂を刺激するのは危険だ。
怜央は私が変な男たちに絡まれて腕を掴まれた時、自分のことを責めていた。
もし、私が怪我なんかして帰ったら彼はあの時以上に自分を責めるだろう。
そんなのは嫌だ。
だから、私は絶対に無傷で帰る。
「ねぇ、聞いてる?」
私は香坂の言葉に黙って頷いた。



