暴走族の姫になると決めた時、ある程度の覚悟はしたつもりだった。
けれど、“つもり”なんかじゃ、だめだったんだ。
香坂の言葉によって、初めて“恐怖”というものを感じた。
「そうそう、怯えてるぐらいが可愛いよ」
「………………」
「黙っちゃうのは面白くないな。安心して。俺は君が目を覚ます時を待っていただけで何もしてない。寝ている子を無理やり……なんて趣味はないから」
「それじゃあ何?私の反応を見るためだけに、あんな言い方をしたの?十分、悪趣味だと思うけど」
「ごめん、ごめん。謝るから許してよ。気をつけた方がいいよって話がしたかったんだ」
「私を攫った人間が言う台詞?」
「ごもっともな意見だね」
香坂はずっと笑っているけれど、その目に光は宿っていない。
「他の仲間はどうしたの?」
「質問が多いなぁ。他の奴らなら金を渡してさようなら」
狂猫はお金で人を雇っている。
冬馬くんの言っていたとおりだ。



