「冬馬くん……?」
「る、るかさ、にっ、にげて……!」
地面に手を付いた状態で、必死に訴えかけてくる冬馬くん。
道を尋ねてきた男性はだらんと腕を真下へ下ろすと、青ざめた表情で冬馬くんを見ていた。
その手に握られていたのはスタンガン。
私たちに声をかけてきた人が、たまたまスタンガンを所持しているなんてありえない。
これは狂猫が仕掛けた“罠”だ。
私たちは見知らぬ男性にあまりにも簡単に気を許してしまった。
そう気づいた時にはもう手遅れだった。
「瑠佳さん!」
冬馬くんの叫び声が聞こえた直後、私は布のようなもので鼻と口を同時に塞がれた。
抵抗しようと伸ばした手は、別の男に掴まれる。
だめだ……力が入らない。
「お前ら放せ!瑠佳さんを放せ!」
未だに立つことができない冬馬くん。
「ははは、案外ちょろかったな」
頭上から聞こえてきた男の笑い声。
「こ、これで許してもらえますか?」
スタンガンから手を離し、何度も頭を下げる男。
それは視界が大きく歪み、意識を手放した私が最後に見た光景だった──。



