【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「あ、道ですか……」

どうやら私たちは過剰に反応しすぎたようだ。

冷静になって考えてみれば、サラリーマンらしき男性が暴走族なわけがない。


「黒田ビルって確か2つありますよね?」

「第一ビルの方です」

「瑠佳さん、黒田第一ビルって橋越えた方でしたっけ?」

「うん。ここを真っ直ぐ行って右に曲がったら橋を渡って、それから信号を……って、紙に書いた方がわかりやすいですよね」

「お手数おかけしてすみません」

「いえ、大丈夫ですよ」

鞄からルーズリーフとペンを取り出す私の傍らで、男性は冬馬くんに個室のあるお寿司屋はないかと尋ね始めた。


研修終わりに寄るのかな?

それなら、高校生の私たちよりも別の人に尋ねた方が良さそうだけど。

そんなことを考えながら地図を書いていると、突然バチバチと電流の走るような音がした。

私が顔を上げたのとほぼ同時に「ゔっ」とうめくような声が聞こえ、冬馬くんが膝から崩れ落ちる。