「…………えっ?」
「あれ?知りませんでしたか?怜央さん言い忘れてたんですかね。それにしても防犯機能まで付けられるなんて、櫻子さんまじで器用ですよね」
“特注”という言葉から、お店には並んでいないものだと知っていた。
だけど、怜央に似たこの狼がまさか櫻子さんの手作りだったなんて……。
怜央はあえて何も言わなかったのだろうか。
新那が持っている狼も真宙くんによく似ているけれど、今、私の鞄の傍らで揺れている狼の方が圧倒的に本人の特徴を捉えている。
この子はまるで怜央の分身のようだ。
それは櫻子さんが怜央を想いながら、一針一針想いを込めたから──?
もし、そうだとしたら私が持っていてもいいのだろうか。
防犯ブザーなら他にも売っている。
これは怜央に返すべきなのかもしれない。
「瑠佳さん、どうかしましたか?気分でも悪いんですか?」
立ち止まったままの私に優しい言葉をかけてくれる冬馬くん。
気を遣わせてどうするの。
今、大事なのは一刻も早く闇狼のアジトへと向かうことだ。



