~??side~
『明日から、お前の寮に住む転校生がいる。』










夜遅くに親父の部屋に召喚され、そんなことを唐突に言われた俺。



『は...?』




俺は寝ぼけてまだ動かない頭を必死で動かした。


裏口編入?いや、まさか...。

”こんな”時期に入ってくることはできないはずだ。




だとすると編入試験を受けたのか...?



いや、ありえない。

ここは入試よりも編入試験が難しい。






ーー要するに、入るなってこと。





その難しさは、学園トップの俺が、合格点の半分も取れないようなもの。


‥‥‥‥裏口編入より非現実的だ‥‥



となると、''お得意様'' が入ったのか...。




それなら仕方がない。

特別寮に入るのもうなずける。









この学校には

普通生徒

生徒会役員生徒


そして特別生徒がいる。




ーーーーーそれぞれ寮も教室も、水道の新しさだって違うんだ。



俺がいる特別寮は、
学校で学力・体力ともにトップレベルでないと入れない。












ーーーーーーーたった一例を除いて。








"お得意様" とは、日本のなかで権力を持つ人間の子供。


ーー要するにお坊ちゃん、お嬢ちゃんだ。



そういう人は、それなりに金を使って、地位を手に入れようと血眼になっている。




そこに救いの手を差し伸べる、という立場で経済を影で牛耳ろうとしているのが俺の一族、紅月だ。







ーーーーー故に、この学校には、金と権力で全てをねじ伏せている人間がごまんとくる。




‥‥‥‥俺は好きじゃないけどな。


ため息をバレないように吐く。
白い煙が、まだ肌寒い夜の空気に溶けていった。






そんなことお構いなしの親父は、「とにかく」と口を開いた。

だが、次に親父の口から出た一言に、俺は衝撃を覚えた。









「‥‥‥お前が、その子を案内してほしいんだーーーーー」
















「!」



ふっと、意識が現実へと戻る。



反射的に腕時計を見ると

「げぇっ‥‥‥」






ーーーーー10:45の数字が点滅している。

もうかれこれ2時間半ほど寝た計算になってしまう。







ーーーーーまずいな。


いくら疲れていたとはいえ、あいつを探し出せないなんて。

急がないと俺の、いや一族の恥だ。







ため息をついて
俺は走り出す。






ーー走りながら俺は考える。

身体いってぇ。