「(私の事より、自分のことでしょ…っ)」



今にも倒れそうな皇羽さん。あれは絶対に、調子が悪い時の顔だ。今にも倒れそうな人の顔だ。


だけど皇羽さんは玄関の取っ手を握って、一言。



「もう絶対…一人にさせねぇ」



そんな事を言っちゃった。


今の皇羽さんの気持ち全て、私に向いている。ハッキリと分かる。あんなボロボロの状態でも、皇羽さんの頭の中にあるのは私。



私のことだけ――



「…っ、ば、」



バカじゃないの…!!



聞くに堪えかねた私は次の瞬間、勢いよくトイレから飛び出して、皇羽さんを背中から抱きしめた。



ギュッ



「え、も…萌々?」



私を見て、すぐに反応した皇羽さん。目にもとまらぬ速さで自身の向きを変えて、正面から私を抱きしめ直す。


そして大きな体が揺れるくらいに「はぁ~」と深いため息をついた。